高い水素の透過特性を有するナノ結晶質セラミックス膜の開発


▼水素分離膜の脱貴金属化の実現

 有機ハイドライドなどの多様な水素キャリアを実用化するためには,不純物を取り除き水素を選択的に取り出すための水素分離膜が必要不可欠です.現在,水素分離膜として埋蔵量の少なく高価なパラジウム(Pd)が用いられています.水素分離膜の脱貴金属化を実現するため,水素の拡散パスとなる界面を導入した安価なセラミックス材料の開発を目指しています.

 詳細については下記の論文をご覧ください.

  • Nature Energy, Vol. 2, pp. 786-794 (2017).
  • Journal of Materials Chemistry A, Vol. 6, pp. 2730-2741 (2018).
  • ACS Omega, Vol. 9, pp. 13738–13745 (2024).
  • 図 ナノ結晶膜の概念図.

    ▼ナノ結晶セラミックス材料界面における水素の拡散特性とそのメカニズムの解明

     第一原理電子状態計算を用い,ナノ結晶セラミックス材料界面での水素の拡散特性とそのメカニズムに着目した研究を行い,以下の点を明らかにしました.

  • TiNナノ結晶界面では水素は負に帯電しヒドリドイオンとなる.
  • 界面幅が4 Å程度の場合,拡散障壁が12 kJ/mol以下という非常に小さな値となる.
  • 拡散障壁の減少は,界面の両側の結晶粒表面を用いて拡散することで実現する.
  • 図 TiNナノ結晶界面における水素の拡散の様子.
    Reprinted from Y. Kunisada et al., ACS Omega 9 (2024) 13738–13745. Licensed under CC-BY-NC-ND 4.0.