▼酸素製造法の省エネルギー化
現在,純酸素は空気中の比較的沸点が高い酸素のみを選択的に液化する深冷分離法で主に製造されています.この酸素製造法は空気の圧縮・冷却(-183℃)が必要なため,大量に純酸素を製造できる一方,エネルギー消費が大きいという問題点があります.
そこで酸素吸蔵材料に酸素を選択的に吸蔵させるPSA(Pressure Swing Adsorption)法が提案されています.PSA法では温度ではなく圧力を変化させるため,エネルギー消費を低減できます.
▼Sr置換に伴う原子構造及び酸素吸蔵特性の変化
詳細はY. Kunisada et al., Surface and Interface Analysis.をご覧ください.
本研究では図に示すブラウンミラーライト型酸素吸蔵材料Ca2AlMnO5+δのSr置換による酸素吸蔵特性変化に着目します.このとき,ドーパントが原子構造や酸素吸蔵特性に与える影響の起源を解明するためには,原子レベルでの解析が必要となります.そこで本研究では第一原理計算を用いて原子レベルで原子構造と局所電子状態を解析しました.
まず,酸素吸蔵に伴うエンタルピー変化を計算した結果,酸素吸脱蔵の平衡条件が低温・高圧側にシフトすることを明らかにしました.これは動作温度を低温化できること素示しています.この変化の起源は,SrがCaよりも大きなイオン半径を持つこと,酸素吸蔵後にヤーン・テラー歪みが解消されることでMn-O間の結合距離が短くなることから,Sr置換による歪みの影響により酸素吸蔵後の構造が不安定化するためです.
また,このSr置換による構造変化により,化学結合状態を反映するスペクトルであるELNESの低エネルギー部分に変化があることも図3からわかります.これはイオン半径の大きなSrの導入により,Mn-O間の距離が伸び,共有結合性が低下したためです.
Adapted with permission from Y. Kunisada et al., Surface and Interface Analysis.. Copyright 2018 The Japan Society of Vacuum and Surface Science